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(百合の花簪……)
取りに戻らなければ…。
だが今、廓内に戻ることは危険が伴う。
いつ神蘭屋が炎に包まれるか解らない。
この状況下で、亮二は百合の花簪を取りに戻ることを決断した。
意を決し、廓内に戻ろうとする亮二の腕を小さな掌が引き留める。
「待って下さい!まさか中に戻るつもりですか?!」
『離してくれ、小紫』
「今、戻るのは危険です!いつ火が回ってくるか解らないですよ?!」
『危険ないのは百も承知だ。でも戻らねぇといけねぇんだ』
「何故ですか?危険なのが解っていながら、何故戻ろうとするんですか?!」
『百合の花簪…』
「えっ?」
『百合の花簪は俺にとって、とても大切な物なんだ!』
小紫の掌を振り払い、亮二は廓内へ駆け戻った。
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