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「藤霞姐さんっ!待って!僕もっ」
亮二の後を追って、駆け出そうとする小紫を音羽が羽交い締めにして引き留めた。
「待て、小紫!」
「離して下さい!音羽姐さん!藤霞姐さんが…藤霞姐……」
「離さない。お前まで火事の巻き添えになってしまう」
「…なら、藤霞姐さんを見殺しにしろってことですか?」
「そうは言ってない!」
「このまま指をくわえたまま、じっとなんてしていられません。離して下さい」
せき立てられるように呟き、廓内へ入り込もうとする。
しかし羽交い締めする音羽の腕が、それを許さなかった。
「離してっ。早くしないと藤霞姐さんが……」
何とかして音羽の腕から逃れようと、躯をもがかせる。
「藤霞姐さ───ん!」
悲鳴じみた小紫の叫び声が、辺りに響き渡った。
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