火の華

8/13
前へ
/520ページ
次へ
「藤霞姐さんっ!待って!僕もっ」 亮二の後を追って、駆け出そうとする小紫を音羽が羽交い締めにして引き留めた。 「待て、小紫!」 「離して下さい!音羽姐さん!藤霞姐さんが…藤霞姐……」 「離さない。お前まで火事の巻き添えになってしまう」 「…なら、藤霞姐さんを見殺しにしろってことですか?」 「そうは言ってない!」 「このまま指をくわえたまま、じっとなんてしていられません。離して下さい」 せき立てられるように呟き、廓内へ入り込もうとする。 しかし羽交い締めする音羽の腕が、それを許さなかった。 「離してっ。早くしないと藤霞姐さんが……」 何とかして音羽の腕から逃れようと、躯をもがかせる。 「藤霞姐さ───ん!」 悲鳴じみた小紫の叫び声が、辺りに響き渡った。  
/520ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1065人が本棚に入れています
本棚に追加