Chapter0

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「なるほど。眠っていたら記憶がなくなっていて、ユウイ嬢に起こされた。で、例のイリーガルと交戦。撃退、と」 「あ、後、イリーガルってのを倒した時に黒い靄みたいなのを吸収しちゃったみたいなんだけど……大丈夫なのこれ?」  まあ、研究者っぽいしこの人には話していいだろう。当の本人は怪訝そうな顔をして此方を見据える。 「体が動くのなら大丈夫でしょう。術式も安定しているようですし……シンフェルシアのおかげで干渉できませんからね、俺は」 「術式? シンフェルシア? できればこっちにもわかるように説明して欲しいんだけど。一応俺の体の事だし……」  俺の問いかけに、クロードは「そうですね……」と考え込んだ後「右腕を崩壊させてみせてください」とめちゃくちゃなことを言う。右腕を崩壊って。あれ、でも――。  右手を見つめる。その方法を知っている。遠い昔やったことが――いや、やらされていたんだっけ? でもそれは重要なことじゃない。方法を知っていることが重要なんだ。  意識を右腕に集中させる。驚くほど簡単に、それは白い糸のようにほどけていく。そして現れたのは黒い影のような異形の手。 「これは……」 「それが貴方の中身です。やはり貴方は――」  これができるのは手だけではない。自分を構成する全てをこのように崩壊させることができる。そう言える確信があった。俺の中身はこの【黒い化け物】だと気づく。 「貴方の殻を構成する魔力は【術式】と呼ばれるもので結びつけられています。先程のはそれを崩壊させた状態。貴方はその術式を利用して強力な魔法を放つこともできるでしょうし、その形を変えることも可能です」  すぐに右手を元の形へと戻す。戦闘に対して怯えがなかった理由が少しだけ理解できた。後は何故彼が俺の中身を知っているか、だ。
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