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でも、彼女や他のみんなの成長を見ていると取り残されている感覚があるのも確かだ。俺だけが成長しないから。外見も中身も変わらず、ずっとこの世界で過ごして行くことになるから。一人で過ごすにはあまりにも長い。人間の寿命が長くても百年だとして、俺はいつまで生きるのだろうか。
「さん、……雪さん!」
「へ?」
「どうしたんですか? 暗い顔して。もしかして具合でも悪いとか? 無理してるんじゃ――」
横で歩く彼女に、俺は慌てて首を横に振る。中学生に気を使わせてどうする。それでなくても俺は彼女にとって近所のお兄さんでしかないんだから。
この世界では血の繋がりもないんだし、やっぱり関わったのも間違いだったかな。こうしていると楽しいんだけど余計なことばかり考えてしまう。夏の暑さもそれを手伝ってる気がするが。
「ほら、古本屋いきましょう!」
駆け出す彼女に、俺は笑って――硬直した。太陽に陰りがさす。彼女めがけてそれは降って来た。それはただの看板。俺にとってはただの看板だ。でも彼女にとってのそれは――。
「走って!」
彼女の足はすくんで動かない。すべてがスローモーションに見え、彼女を庇うようにうつ伏せに倒れこんだ。
昔の俺なら簡単に彼女を抱いてよけれたんだろうな、とそんなことを考えているうちに、ざわめきが大きくなっていくどころか遠ざかって行く。
その中でひときわ大きく自分を呼ぶ声が聞こえた。
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