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「貫いたのはその棍でか?」
「うん。あそこから飛び下りて。ね?」
彼女に同意を求めると慌ててこくこく頷いた。そこまで慌てなくてもいいのにな。彼は少しだけ怪訝そうな顔をして、「そうか。……名前は?」と俺の方を見据える。
「ああ、俺は――その、頭まででかかってるんだけど……その、忘れちゃったみたいで」
まあ間違ってはないよね、と思いながら相手の様子をうかがう。櫻庭隊長は動揺したように「は?」と聞き返してきたが、すぐに切り替えて「出身は?」とまた問いかけてくる。出身ねえ。ここも下手にごまかしてあとでバレると面倒だし、正直に答えるかな。
「えーとね、わかんない」
「ふざけてんのか?」
彼が俺を疑っているのは丸わかりなので、一応ここは主張しておく。これで俺の言葉を聞いてくれないような人だったらちょっと嫌だなあ、と思いながら。
「いや、ふざける理由がないからね。それに嘘言ったってすぐバレるでしょ? 本当に覚えていないんだ、自分に関することは何も」
先ほどの考えは杞憂に終わり、「それもそうか……」と目の前の男は頷いて腕時計を操作しはじめる。
その腕時計は通信機か何かなのだろうか。先ほど彼女もいじっていたけど。
「クロードか? ああ、ちょっと一般人のカウンセリングを頼みたいんだが。イリーガルに襲われていたわけではない。目立つ外傷も――ないな。……わかった、帰還する」
これは彼らに同行しないといけない感じかな。ここで組織的なものに拾ってもらえるのは結構ラッキーかもしれない。
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