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転入生が受けようが、攻めようが、俺には関係ない。
もしも後日談で生徒Fな俺にノロケて来ても、俺はぎこちなく『良かったですねー。おめでとうございます(棒読み)』で返すし、飽くまで配役があったとしても、俺は生徒Fかその辺り。
直接転入生の物語には一切触れない。
本当はそんな物、紙面の上で繰り広げて頂きたい物だったが。
「ってか、煩いな…………あれ、センセ、俺の席言ってないぞ?」
転入生の独り言が聞こえる。
確かにあのホスト、そのまま出て行きやがった。
まあ席ぐらいどこか空席があるだろう。
俺は頬杖して、また窓の外を見る。
時々飛んでる飛行機雲を見るのが俺のマイブームだったりする。
「あ、此処かっ」
転入生の声。
自分の席を自力で見付けたらしい。
良かったな、バカっぽいのに直ぐに見付けられて。
「よろしくなっ、隣」
やっぱり馴れ馴れしい奴だったか。
こんなのじゃ、隣の席の奴も可哀想だな。
「なあ、聞いてるのか?」
ぽんぽんと、俺の右肩に何か衝撃が来る。
ゼンマイが回らなくなりそうな壊れ掛けの人形のように俺は首をあちらへと向ける。
「……あっれー…………おかしいなぁ。俺、見えちゃいけない物が見えちゃってるよー」
「安心しろ。あれは人間だ。転入生と隣席なんてついてるな、佐伯」
こんな時に限って、満面の笑みで話し掛けてくる永塚。
……止めてくれよ、目立つ奴の隣席とか目立つだろう。
耳を塞ぎ、目を閉じて、教室から姿を消したい。
「……いやー、マジで、クーリングオフとかないんですかね」
泣く泣く呟いた俺の言葉は不運にも、教室の雑音に塗り潰されていった。
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