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「もう楽しくて、恋とかどうでもいいかなって時に直ちゃんに出会ったんです」
なんでも、直ちゃんはゲームのクリエイターらしく、
趣味と意識調査という実益を兼ねて、コミケに来ていたらしい。
さやかちゃんが会場で、ただならぬ視線を感じてキョロキョロしていると、
直ちゃんのひときわ「ぎょっ」とした視線とぶつかった。
「さやの一目惚れだったんです」
「えっ! さやかちゃんの? 直ちゃんが一目惚れしたんじゃなくて?」
するとそれまで押し黙っていた麻衣子が、眼鏡をキリリと上げた。
「百合江ちゃんは人の気持ちを思いやれるし、気遣いも抜群なのに、あいも変わらず審美眼がないわねえ。
ラッピングをどうにかすれば、見た目はかなりいいわね。
それに、食事の仕方に身のこなし方。直ちゃんは育ちがいいわね」
ラッピングって服装もろもろのことですか?
育ちがいい?
麻衣子は笑いをこらえていただけじゃなく、さりげなく直ちゃんを観察していたらしい。
「直ちゃん、他の事には色々とこだわりがあるんですけど、着るものは体感温度が適切であれば、なんでもいい人なんで。
育ちがいいってよくわかりませんけど、実家は開業医でお母さんは趣味で茶道の先生をしているそうです」
開業医の息子?
それってボンボンなんじゃないですかい? さやかちゃん。
しかし着るものは体感温度が適切であればいいって、家でいうとこの雨風しのげれば別にいいって感じですか?
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