1 case study さやかちゃんの場合

12/18
前へ
/33ページ
次へ
「もう楽しくて、恋とかどうでもいいかなって時に直ちゃんに出会ったんです」   なんでも、直ちゃんはゲームのクリエイターらしく、 趣味と意識調査という実益を兼ねて、コミケに来ていたらしい。   さやかちゃんが会場で、ただならぬ視線を感じてキョロキョロしていると、 直ちゃんのひときわ「ぎょっ」とした視線とぶつかった。 「さやの一目惚れだったんです」 「えっ! さやかちゃんの? 直ちゃんが一目惚れしたんじゃなくて?」   するとそれまで押し黙っていた麻衣子が、眼鏡をキリリと上げた。 「百合江ちゃんは人の気持ちを思いやれるし、気遣いも抜群なのに、あいも変わらず審美眼がないわねえ。 ラッピングをどうにかすれば、見た目はかなりいいわね。 それに、食事の仕方に身のこなし方。直ちゃんは育ちがいいわね」   ラッピングって服装もろもろのことですか?  育ちがいい?  麻衣子は笑いをこらえていただけじゃなく、さりげなく直ちゃんを観察していたらしい。 「直ちゃん、他の事には色々とこだわりがあるんですけど、着るものは体感温度が適切であれば、なんでもいい人なんで。 育ちがいいってよくわかりませんけど、実家は開業医でお母さんは趣味で茶道の先生をしているそうです」   開業医の息子?  それってボンボンなんじゃないですかい? さやかちゃん。 しかし着るものは体感温度が適切であればいいって、家でいうとこの雨風しのげれば別にいいって感じですか?  .
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2072人が本棚に入れています
本棚に追加