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連絡先を交換してから、さやかちゃんは頑張った。
メールにコンスタントに返事がくるまで一週間。
電話でまともに話せるようになるまで一ヶ月。ようやく会えるようになるまで二ヶ月。
よく、くじけなかったなあと心から感心した。私ならメールの時点で撃沈されたも同然になるよ。
「直ちゃんは、最初の頃は無口でしたけど、慣れてくると沢山話してくれるようになりました。直ちゃんの仕事のこととか元々興味ありましたし。すごいんですよ、直ちゃんの作ってる物って」
徐々に会う回数も増えて、さやかちゃんは直ちゃんをどんどん好きになっていったんだって。
「それでとうとう先月、彼女にして欲しいって言ったんですけど」
直ちゃんは困惑した表情をしたんだそうな。それから、会った時に、何度もその話題に触れようとすると、話題を変える直ちゃんに、さやかちゃんは切なさと不安のせいでよくない方向に考えてしまったんだって。
「私が過去、自分を好きになってくれた人を好きになったように、直ちゃんも私が直ちゃんを好きだから、優しくしてくれるんじゃないかって思ってしまったんです」
そうかあ。自分にそういう過去があったらそう考えてしまうかも。
「それで先週とうとう、もう、いっぱいいっぱいになって、泣きながら私の家に直ちゃんを呼んだんです」
直ちゃんはびっくりして駆けつけてくれたんだそうな。ボロボロに泣きはらした目で、直ちゃんを見つめたさやかちゃんは自分の気持ちを直ちゃんにぶつけた。
「直ちゃんが私の気持ちに応えられないのは分かったから、もう何も言わないから、一度だけキスして欲しいって言いました」
それを聞いた直ちゃんは、切ない表情をして、さやかちゃんを引き寄せ抱きしめた。
「『今から僕のうちに行こう』って言われたんですけど、何にも返答らしきものはもらってないし、でも直ちゃんに抱きしめられてるし、わけがわからなくてパニック状態でした」
フラフラしているさやかちゃんは直ちゃんに手を取られ、直ちゃんのマンションまでたどり着いた。
「部屋に入ってソファーに座ってから、直ちゃんがスケッチブックを何冊か持ってきたんです」
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