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麻衣子は誰でもSかMにカテゴリ分けして相手を分析する。
それもどうかと思うけど、相手の中身や本質嗅ぎ分ける麻衣子の洞察力にはいつも驚かされる。麻衣子に言わせると私はドMなんだってさ。勘弁してくれ。
「だから百合江ちゃんは私から離れられないのよ。うふふ」
こんな事をいつも言われながら、十年以上友達やってます。
麻衣子によるとSとMにカテゴリー分け出来ない男女もいる。それはナルシスト。数だけこなしている遊び人に多いらしい。ナルシストは自分しか愛せないから、SとMというカテゴリーの範疇ではないんだって。でもなんとなくわかるような気がする。ああ我ながら麻衣子の考え方に毒されてるわ。
「ところで、百合江ちゃん」
麻衣子が珍しくまじめな顔で私に尋ねた。
「アドレナリンが全身を駆け巡るような出会いを経験したことがあるの?」
「え?」
その発言にさやかちゃんも、おや? という表情をした。
「百合江さん、さやのアドレナリンの表現にやたら食いついてましたもんね?」
私は視線をウロウロさせた。麻衣子の洞察力にかかると、なす術はない。私は麻衣子に話した事がない事が、一つだけある。けれど、あまり話したくない。麻衣子は何かを察して、それ以上は追及しなかった。
「まあ別によいのだけれど」
そう一人ごとのように呟いた。話が止まった所で、さやかちゃんは時計をちらりと見た。
「そろそろ解散しませんか? かなりいい時間になりましたし」
「そうねえ。さやかちゃん早く直ちゃんの所に行きたいのね。うふふ」
「散々話聞いてもらっといて、何ですけど、その通りです」
さやかちゃんがにんまりした。
「そうね。帰りましょ」
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