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それが、二年程前のこと。
あれから、何度かさやかちゃんが直ちゃんを連れてきて、直ちゃんも私たちと少しずつ話せるようになって、洞察力ランク外の私にも、優しい愛情深い人だということがわかった。
無事に『直ちゃん』って呼ぶことにも同意してもらえましたよ。それにしてもびっくりしたのが外見の変貌ぶり。さやかちゃんと付き合うようになって、直ちゃんのラッピングは全てさやかちゃんが選ぶようになったからだ。
「体感温度が適切であればなんでもいいのでさやに任せるよって言ってくれたんで。髪は人に触られるのが嫌みたいなので、さやが切ってます。今までは自分で切ってたんであんなことになってたみたい」
いまや直ちゃんはＨＵＧＯ ＢＯＳＳなんかをさらりと着こなす三十四歳。元々背も１９０センチ近くあるし、ガッチリしているので、様になっている。私の審美眼はやっぱランク外だね。
この二年の間もさやかちゃんたちのお付き合いは順調で、近々結婚するかもしれない。
直ちゃんはさやかちゃんがいると何でも創り出せそうなんだってさ。究極のノロケですよ。
ダリとガラみたいね。
そう言ったら、ほっぺたを膨らませたさやかちゃんに、怒られちゃった。
「私はガラみたいに浮気なんてしません！」
サルバートーレ・ダリ。シュールレアリストを代表する画家。彼の絵には常に彼の妻ガラを思わせるモチーフがある。ガラはダリの創造力を掻き立てるミューズだった。でも、ガラの好物は才能ある若いアーティストで、ダリはガラの浮気に悩まされるんだよね。
まあ、怒られて当然か。さやかちゃんが浮気をするはずが無い。きっと二人はずっと寄り添っていけるんじゃないかな。オタクカップルだけども。割れ鍋に綴じ蓋とはよく言ったもんだ。
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