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遼一君は麻衣子と出会って、二週間後に彼女と別れた。でも、そっからがまた苦悩の日々。
「たかだか二十年程度の人生ですけど、自分の考えがグシャグシャに崩壊して、パニック状態ですし、もし、麻衣子さんと付き合っても、僕みたいな未熟者じゃあっという間にあきられてしまうんじゃないかと思いました。もしそうなったら、二度と立ち上がれないような気がして」
うーん。いじらしいなあ。
「どう考えても僕と麻衣子さんじゃ釣り合わないと思いましたし」
そんな事をグルグル考えつづけた遼一君は、はたとある考えにたどり着いた。
「でも、あの麻衣子さんが自分に釣り合わないものを選ぶだろうか? と思ったんです。そんなものの為に毎晩店にくる意味ないですし」
すごいなあ。その通りだよ。麻衣子はどうでもいいものはスルーする。そして何でも自分に合う物を選ぶ。そして、困った事に、欲しいものには見境がない。麻衣子がお嬢とはとても思えない所以の一つでもある。特に人材に関しては。それは、好きな男に関しても同じってことか。
「そう考えると、自分にも少し自信が持てたんですけど、でも今度は麻衣子さんのすべてが欲しくなって。自分にこんな暗くて浅ましい気持ちがあったことが怖くなりました」
未体験の感情を味わうのは足がすくんでしまうよね。しかもこの先もっともっと、強い感情を味わう予感があるのだから。
そう考えていた所、麻衣子に明日からもう来ないと言われた。遼一君は体中の血が全部抜かれたような感覚だったという。
「もう、たとえ、全部じゃなくてもいいやって。何でもいいから、傷つこうが立ち上がれなくなっても、麻薬のようなこの人のそばにいたいって思いました」
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