722人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
『眠り姫』と言えば絵本やアニメにもなっているお馴染みの童話。
悪い魔女の魔法で百年の眠りについてしまうが、勇敢な王子がキスで目覚めさせ、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
ここまでが一般的に絵本に出ている話。
しかし『眠り姫』には衝撃の続きがある。結婚した王子のお母さん。要は『眠り姫』の姑は食人鬼で、嫁と孫を食べようとするのだ。
究極の嫁イビリじゃない?
結局、王子に企みがバレた姑は自ら死んでしまうんだけど。いろんな教訓が練り込められていて怖いよね。
まず、恋人の親が必ずしも、自分にとって、善良な存在とは限らない。ということ。それに結婚してからの方が本当に大変だということ。食人鬼までは行かなくても、結婚してから発覚する、それまで見えなかった苦労ってあるのだろうなって考えさせられる。
きっとそんな苦労をしてもこの人と一緒なら、大丈夫と思える人と結婚しなければいけないのだろうね。
だから病める時も健やかなる時も……。と誓うわけだ。
さやかちゃんに『眠り姫』の本当に怖い続きをざっくり話すと、さやかちゃんはくすくす笑った。
「確かに、直ちゃんの家族が、素敵な人たちなのはラッキーでしたけど、そうじゃなくても、直ちゃんとなら大丈夫です!」
うん! そうだと思うよ!
私が堂々と言い切ったさやかちゃんに感動さえ覚えていると、麻衣子が黒い笑みを浮かべた。
「ところで百合江ちゃんは石崎とどうなったのかしら?」
「え?」
まあ当然この話題になるよねえ。
麻衣子のしたり顔に少し、いやかなり、いらついた。あんた、結果わかってて、聞いてるね? 私が口を開きかけた瞬間、背後からバリトンボイスが響いた。
「試しに付き合うことになったんで、ご理解ご協力お願いします。まあ、本上さんご所望の肉弾戦は、当面視野に入れないことで合意に至りました」
石崎君が絶妙のタイミングで登場した。金曜日の事が思い出されて、どんなに落ち着こうとしても顔が赤くなる。
そんな私の表情を麻衣子はじっくり観察した。
.
最初のコメントを投稿しよう!