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気づくと週末になっているのは、仕事が充実しすぎているせいだろうか?
職場恋愛(?)にもかかわらず、今までと大差ないウィークデーを過ごしている。少し変わった事と言えば、石崎君からプライベートなメールが来るようになった事くらいだ。
忙しいけれど、週末くらいは一緒に過ごしたいと言う彼の気持ちを尊重して、私は石崎くんを誘ってUNITEにやってきた。これだと、尊重と言うよりは、単に自分の日常的行動パターンに付いてきて貰っているだけかもしれないけれど。遼一君が、いつもの笑顔で迎えてくれる。
「こんばんは。百合江さん。あっ石崎さんも一緒ですか?」
「うん。カウンター空いてる?」
遼一君は空いてる席を視線で促した。UNITEに来るのが初めての石崎くんは、ぐるっと店内を見渡してから、目を細めてカウンターに座った。興味深そうに私たちの顔を見ながら、遼一君が聞いた。
「何にしますか?」
「ハイネケン。石崎君は?」
「じゃあ。俺も」
遼一君はよく冷えたグラスを持って、ビールサーバーへ移動した。飲み物を待っていると、石崎君が眉間に皺を寄せた。
「百合江。また、名前で呼ばなかったろ?」
「うっ」
今日ここに来るまで、何度も言われたのに、またやってしまった。でも、名字で呼びなれているだけになかなか違和感が消えない。
なんかこう。くすぐったいかんじ?
「ごめん」
私がそう言うと石崎くんは黒い笑みを浮かべてこう言った。
「俺の名前は?」
「健吾」
「もう一回」
「健吾」
そして「石崎君」と言ってしまったら、必ずこうして、言い直しをさせられた。
もうこれ、今日、四回目。
いいんだけどさあ。なんかさあ? ちょっと、犬のしつけっぽくない?
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