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私が首を傾げていると、一生懸命我慢していたけれど笑いがこらえきれない。といった風情で遼一君がコースターにビールを置いた。
「やっぱり、僕の思った通り、お二人はしっくりくると思いますよ」
遼一君が微笑むと、いしざ……。健吾は遼一君を見た。
「君はたしか本上さんの?」
「ええ。寺島遼一です」
遼一君は健吾に名刺を差し出した。健吾も出そうとすると、遼一君がそれを遮った。
「大丈夫ですよ。麻衣子さんの会社の人のことはほとんど把握してますし」
そう言われて名刺入れを胸ポケットにしまった健吾は、値踏みするように、遠慮なく遼一君を見た。
「なるほどね。あの雌虎のような人を虜にしている男か」
遼一君はクスクス笑った。
「どうでしょうね? ぼくの方は完全に虜になっていますけど」
さらっとそう言うと、遼一君は他のオーダーに呼ばれて行った。
本日は金曜日。ディスコナイトな選曲だ。アース・ウィンド&ファイヤ『September』を聞きながら、乾杯すると、常連の山さんがちょうど店内に入ってきた。私たち二人を見るとニンマリして、カウンターに座らず、DJブースへ向かった。
山さん、まさか?
私の読み通りクール&ザ・ギャングの『Celebration』がかかった。
「もう山さんってば」
「ここに百合江ちゃんが男と二人で来るとこ一度も見たことないから、これは祝っておこうと思って」
そう茶目っ気たっぷりに笑った。
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