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「うーん。いいかな? こんな格好で」
土曜日になり、鏡の前に立つ。休みの日に、誰かと会うってよく考えたら久しぶりかも。結婚してる友達には家庭があるから休日に会うってなると、一大イベントになるし、一人身組は一人身組で、充実してるからなあ。休みの日にまで麻衣子と会おうとは流石に思わないしね。
いわゆるお家デートだから、楽な格好で行こうと思って、ざっくりした丈の長いニットとデニムを身に着けた。靴はクロエの金具のついたフラットシューズにしよう。
目の大きめなステッチとつま先の丸みが気に入っている。靴を履いて、部屋を出た。少し肌寒い。あとひと月もすればクリスマスだ。
街中がクリスマスムードのイルミネーションやディスプレイで溢れている。夢のない(そう言われても仕方のない)恋愛感情全否定女だけど、この時期はやっぱりわくわくする。
毎年ふらっと仕事帰りにミキモトの巨大なクリスマスツリーを時間も忘れて眺める事もある。私のささやかな、年中行事の一つだ。
あれを、初めて見たときは本当に感動して、キラキラと輝くツリーを見上げて、世界の平和を祈りたいような大げさな気持ちになった。
まあ、本来は恋人同士で見に行って、二人の未来を語り合ったりするためのものかもしれないけれどね。
健吾のマンションについて、インターホンを押す。オートロックを解除してもらってエントランスに入った。
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