4 サンプルの恋人

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「百合江はできんのか?」 「失礼な。うちは父子家庭だったから、ご飯は私担当!」   一瞬、健吾が気まずい表情をした。 「お母さんは?」 「ああ。中二の時に交通事故でね」 「そうか。じゃあお父さんは地元に一人?」 「うん」 お父さんはお母さんを亡くしてから再婚しなかった。 二人はお見合い結婚だったけれど、娘の私から見ても、素敵な夫婦だった。 お母さんが亡くなってから、数年たってから、私が、再婚したらいいのに。と言ったらお父さんは悲しい微笑みを浮かべた。 「お父さんはお母さんと出会うことに全ての運を使い果たしたから、いいんだよ」   そう言い切った。私も悲しく微笑み返した。 「すまん」 「ううん。あっこれほんと美味しいね」   ばつの悪そうな顔をしていた健吾は私の言葉に気を取り直した。 「百合江は料理できるとしても、本上さんはできなさそうだよな」 「とんでもない。麻衣子は小さい頃から、お習い事は一通りやってるんだよ? 料理も必修科目だったって言ってた」   私もキッチンに立つ麻衣子の姿は想像できないが、遼一君によると、一切無駄のない動きでテキパキとするらしい。 お昼ご飯を食べてからリビングでコーヒーを飲んでいたら、DVDでも見ようということになった。健吾が何本か借りてきていたのを物色する。 「これって?」 「ああ。昨日UNITEでディスコチューン聞いてたら、見てみたくなって。百合江は見たことあるか?」 「ううん。実はないんだ」 『サタデー・ナイト・フィーバー』のDVDだ。   ビージーズの曲満載でトラボルタがでているんだよね。『Stayin' Alive』もこの映画の曲だ。 「これ見よっか?」 .
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