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「百合江はできんのか?」
「失礼な。うちは父子家庭だったから、ご飯は私担当!」
一瞬、健吾が気まずい表情をした。
「お母さんは?」
「ああ。中二の時に交通事故でね」
「そうか。じゃあお父さんは地元に一人?」
「うん」
お父さんはお母さんを亡くしてから再婚しなかった。
二人はお見合い結婚だったけれど、娘の私から見ても、素敵な夫婦だった。
お母さんが亡くなってから、数年たってから、私が、再婚したらいいのに。と言ったらお父さんは悲しい微笑みを浮かべた。
「お父さんはお母さんと出会うことに全ての運を使い果たしたから、いいんだよ」
そう言い切った。私も悲しく微笑み返した。
「すまん」
「ううん。あっこれほんと美味しいね」
ばつの悪そうな顔をしていた健吾は私の言葉に気を取り直した。
「百合江は料理できるとしても、本上さんはできなさそうだよな」
「とんでもない。麻衣子は小さい頃から、お習い事は一通りやってるんだよ? 料理も必修科目だったって言ってた」
私もキッチンに立つ麻衣子の姿は想像できないが、遼一君によると、一切無駄のない動きでテキパキとするらしい。
お昼ご飯を食べてからリビングでコーヒーを飲んでいたら、DVDでも見ようということになった。健吾が何本か借りてきていたのを物色する。
「これって?」
「ああ。昨日UNITEでディスコチューン聞いてたら、見てみたくなって。百合江は見たことあるか?」
「ううん。実はないんだ」
『サタデー・ナイト・フィーバー』のDVDだ。
ビージーズの曲満載でトラボルタがでているんだよね。『Stayin' Alive』もこの映画の曲だ。
「これ見よっか?」
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