4 サンプルの恋人

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週末は終わりを告げ、月曜日になった。どんな顔して出社すればいいんだか。そんな事を思いながらエレベーターに乗ると、さやかちゃんと出くわした。 「百合江さん。おはようございます」 「おはよう」   月曜日のさやかちゃんは、動けなくなるくらい満腹になった猫がゴロゴロいっている姿が思い浮かぶくらいご機嫌だ。   直ちゃんと付き合いだしてから、ずっとこう。   毎週末、直ちゃんの所から出社しているから、理由は明白だけど。そんなにいいのか? と軽く二人の性生活について聞いてみた。こういうことをあけすけに聞いてしまうのは少なからず、麻衣子の影響かも知れない。 「うふふ。直ちゃんはもう、何もかも最高です。想像力のある人はセックスも上手いんですかね?」   だってさ。ご馳走様。ちなみに麻衣子の言い分はこうだ。 「あら、男はどうだかしらないけど、女は心も体も解放しないと、本物の快楽は得られないのよ。さやかちゃんにとって自分の全てを預けられるのが直ちゃんだから、そんなにいいのよ」   はいはい。そうですか。麻衣子も遼一君と相当充実しているのね。と苦笑いを浮かべたものだ。それにしても、さやかちゃん。今日は一段とご機嫌だ。 なんだかキラキラ輝いているようにさえ見える。私がそっと様子をうかがうと、さやかちゃんの薬指にさやかちゃんの笑顔と同じように輝いている物を見つけた。 「さやかちゃん。その指輪って?」 「はい。土曜日、直ちゃんにプロポーズされました」   まぶしい笑顔を浮かべてさやかちゃんが言った。 「おめでとう」 「ありがとうございます。今週末は幸せいっぱいでした。えへへ」   明らかに思い出し笑いをしているさやかちゃん。ほんとに良かったね。 .
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