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「仕方がない事とはいえ、結局、毎年ここで過ごすのよねえ」
「すいません。麻衣子さん」
遼一君が、麻衣子に平謝りしている。
今日はクリスマスイブ。UNITEは毎年、イベントをしている。だから、遼一君はクリスマスイブは大忙しだ。
というわけで、毎年、麻衣子は私とここに来ているわけ。今年は健吾も一緒だ。麻衣子は容赦なく、しげしげと、私と健吾を見る。
「百合江ちゃんたちは相変わらず肉弾戦なしなのねえ。石崎の気の長さには、感心を通り越してじれったくなるわ」
麻衣子。私たち何も言ってないのにどうして「まだだ」と分かるんだ? 健吾がふっと鼻で笑った。
「ここに、二カ月通ってた本上さんにいわれても」
ひいいー。ドS対ドSの戦いが始まるのか?
お試しのお付き合いが始まってもう一ヶ月以上たつ。私も、男の裸を見て逃げ出す修道女ってわけでもないし、さすがに、お預けをくわせているような気がして、申し訳なくなり始めていた。
「しよっか?」
先週そんな風に誘ってみた所、健吾はゲラゲラと笑いながら、私の鼻をつまんだ。
「色気のない誘い方だな。色気全開で迫ってくるまで待てるから、変な気つかうな。俺は百合江がまるごと欲しいんだ。ただし」
「ただし?」
「その時は妄想してること全部するから、覚悟しとけ!」
「ええっ!」
健吾は、妄想ってどんな内容なのか想像するのも恐ろしいような、黒い笑みを浮かべていた。と言うわけで、まだ肉弾戦には取り組んでいない。
「さやかちゃんは今頃、直ちゃんとひきこもりかしらねえ」
ドS対ドSの戦いには発展せず、麻衣子が話題を変えた。
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