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香さんは高校生の息子さんがいるとは思えないくらい、生き生きと若々しい。黒いツーピースは控えめだけれどシックで香さんを際立てている。山さんと香さんにはあたたかい思い合いの空気が流れていて、素敵なカップルだ。
「あの夫婦いいわよね。一緒に過ごしてきた絆を感じるわ」
キールを飲みながら、麻衣子が呟いた。
そうだよね。山さんと香さんは、自分たちのことを戦友だと言っていた。結婚して色んなことを何年も二人で乗り越えてきたカップル。毎年クリスマスに香さんをねぎらう山さん。
香さんが四十半ばであんなに若々しいのは、山さんがずっと香さんを女として扱ってきたからだと思う。
よく妻の事を「お母さん」という男の人いるけど、あれはダメだと思う。子どもにとっては「お母さん」かもしれないが、夫が自分の名前を呼ばなくなったら、誰が呼んでくれると言うのだろう?
そうしていくうちにどんどん身も心も「オバサン」化していくんじゃないかな?
そんなことを考えていると、遼一君が、私のグラスを指した。
「百合江さん、何か作ります?」
テキーラサンライズを頼んだ。健吾はラムをロックで飲んでいる。健吾となら、戦友になれるだろうか?
一緒にいてくつろげると言うのは貴重なことだと思う。
でも情熱は? なくても大丈夫?
うーん。わからないなあ。
私たちはお酒と音楽と会話を楽しんで、クリスマスイブだというのに、今日もそれぞれ自分の部屋で眠った。
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