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僕は思わず、手元にあった華奢な、僕が洗うとすぐ割れそうなティーカップの紅茶を啜った。
フォートナム&メイソンのロイヤルブレンド。
姉さんの常備薬みたいな紅茶。
ここまで、されるって、姉さんはいったいここでいくら使ってるんだろう?
「直也!! さやかちゃんのサイズは?」
「……。知らない」
「何ですって?」
「知らないんだ。指輪にサイズがあるって今気がついたくらい」
お茶をだしてくれた店員のお姉さんの笑顔が引きつった。
それに構わず僕はお姉さんに質問をした。
「あの、指輪のサイズってどうやってはかるんですか?」
お姉さんは、スーツのポケットから、指輪の様なものが、たくさんついた輪っかの鍵の束みたいな物を出した。
「店頭ではこれで、はからせていただいております。リングサイズゲージと言うものなんですが」
「直也! あんたまさか、さやかちゃんに今まで一度もプレゼントした事ないわけ?!」
「プレゼントは何回かした事あるけど……」
さやちゃんがプレゼントして欲しいっていう物……。
一番最近だとクリスマスに欲しいって言われた『銀河英雄伝説』のスペシャル特典つき、DVDBOXだった。
「やっぱ直ちゃんはヤン様に似てるの。もうヤン様カッコよすぎ」
僕は別にヤン・ウェンリーには少しも似てないけど、さやちゃんがそう言うのが嬉しかった。
「貴金属的な物は一度もないんだ。あの、そのサイズはかるヤツって貸して貰えませんか。必ず返しますし、指輪もここで買いますから」
イレギュラーすぎる注文の筈なのに、店員のお姉さんは、こころよく貸してくれた。
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