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外れない。
本当に、外れない。どうしよう?
一生懸命外そうとするけど、外れない。
もう、焦りすぎて、泣きそうになっていると、一番恐れていた事が起きた。
「直ちゃん、何してるの? あれ? 何これ?」
さやちゃんは、自分の指にはまっているものを訝しげに見つめた。
鍵の束みたいなそれは、さやちゃんが少し手を動かしただけで、ジャラジャラと大袈裟な音を立てた。
さやちゃんは完全に、起きてしまった。
「さやちゃん、ごめん。外れないんだ」
寝起きのさやちゃんは、ぽかんとした。
「外れないんだ。どうしよう?」
「これ、あっ。指輪のサイズ測るヤツだね。うん大丈夫。すぐ外れるよ。直ちゃん、私のバッグ取って来て」
さやちゃんにそう言われて、僕は慌ててさやちゃんのバッグを掴んで渡した。
さやちゃんは、バッグの中のソーイングセットを出して、白い糸を自分の指に巻き始めた。
「前にお母さんがやってるの見た事があるの。こうやって、ゆびを細くして、こっちに糸を通すと……。ほら、はずれた!」
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