出逢い

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「暇」 溜息と共にこぼれた。でも今は高3。一応進学校に通ってるから受験勉強しなければならないんだけど、やる気が出ない。そんなことを思いながらベットに寝転んでいると、 ガタッ! いきなり机の引き出しが音をたてた。 「な、何?」 凝視していると、 引き出しの中から袴をはいている男の人が出てきた。 「……」 男の人と私の間に一瞬沈黙が流れた。でもすぐに、 「貴様、何奴?」 刀を突きつけられた。 それはこちらのセリフだ。何でこんな展開になっているかわからない。恐怖と驚きでパニックになっていて何も言えない。 「…お前、名はなんと申す?」 「……さ、桜」 やっとのことで声を絞り出す。 すると男の人は刀をしまいながら、 「桜殿、ここは何処だ?見たところ奇妙なものだらけだ。俺は何故こんな所に…」 刀を突きつけた時とは違った優しい雰囲気に私も落ち着いてきた。 「…ここは、東京です」 「東京?東京とはなんだ?」 「……。」 なんとなく思っていたけど、まさか本当にこんなことが起こるなんて。いや、でも信じられない。…確認しよう。 「…あの、今何年かわかりますか?」 「?…、元治元年だろう?」 …やっぱりこの人はタイムスリップをしてきたんだ。なんで?てか、元治元年ていつ?その前にこの人は誰?いろいろな考えが頭のなかを巡る。 「......。」 「桜殿?どうかしたのか?」 「名前はなんていうんですか?」 「名は、斎藤一だ」 「斎藤一?新撰組の?なんでそんな人が?」 「俺を知っているのか、なら話は早い。こんな所で休んでいる暇は無い。早く戻らなければいけないのだ。だから、ここが何処か教えてくれ」 どう説明すればいいか迷ったけど、とにかくわかってもらわなきゃ。 「えっと、ですね…。ここは斎藤さんがもといた時代ではなくて、確か約150年くらい後の時代なんです。斎藤さんは時空移動してしまったんだと思います」 「……なるほど」 わかってもらえたのかな? 「…桜殿、つまり俺は新撰組の所へは戻れないという事か?」 どう答えるべきか迷った。"戻れますよ"なんて本当に戻れるかどうかわからないのに、軽々しく言えない。でも、斎藤さんが新撰組で大事な役割を担っていた事は私にもわかる。それに、……ここまできたらやるしかないよね。 「私が必ず、斎藤さんをもとの時代に戻します」
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