友達と先輩

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不良グループの仲間の 遠野 聡志 〈とおのさとし〉が 僕に言った。 「お前、最近元気無くね?」 そう言って遠野は苦笑いした。 僕は「大丈夫だよ。」と 少し意味深に返してしまった。 でもこの時遠野だけは 僕の心を透かしていたかも 知れない。 志保を好きな先輩 佐藤 武司 〈さとうたけし〉は 志保に対してアプローチを かけ始め、二人で居る事も 増えていった。 今、僕がアプローチしても 志保が僕を好きになる事は 到底無いだろう。 そう頭に刻みながら僕は 黙って二人を見ていた。 仲の良い友達の 西本 周也〈にしもとしゅうや〉は 僕と二人で居る事が多く、 少し経った日から、 志保を想う事も少しばかりは 知っている。 僕は武司を敬い、 大事な先輩でもあったが 志保の事も有り、時には 疎ましくも感じた。 この気持ちは武司が 悪い訳では無いのだが、 嫉妬心とも限らない。 寧ろ闘争心にも近い 物でもあった。 そんな六月の梅雨が 少しばかり強くなった時だった。
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