高2、香り

3/14
前へ
/68ページ
次へ
「ほんっと可愛いげないよね!ちづは!」 わざとらしくない高めの声。 柔らかく女の子らしい声の由里子は、ぷんぷんっとでも言いそうに頬を膨らませて私を睨んでいる。 普通ならぶりっ子だと敬遠されがちなその様子が、こんなにも素直に愛らしいと思えてしまうんだから、彼女はズルい。 女の私から見ても可愛い。 「…由里子はほんっと可愛いよねぇ…」 「えっ」 ぽろりと漏れた本音に頬を染める由里子。 なんなのこの子、可愛すぎデショ 「えっと、何の話だった?」 「あっ、そうそう!あのねっ…」 ヘッドホンのコードをくるくるとiPodに巻き付けながら由里子の話を聞こうと体の向きを変えたとき 「あそ部の入部希望者いませんかぁー?阿蘇くんと遊ぶ部活でーす!」 大きすぎるその声に、教室にいたみんなの視線が一点に注がれる。 「えー?あたし入部したーい!」 「俺も俺も~」 何が楽しいのかキャハハと騒ぐ数人のグループ。 その中心にいる、一際目立つ明るい茶色の頭が飛び上がる。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加