滅亡スパイラル

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カサカサ・・・ 1メートル四方の水槽の中で、蟻が蠢いている。 土の中には無数の空洞がいり組み、その中で決められた役割をそれぞれが従事する。 始めは15cmほどの虫かごから生まれた社会は、3年も経つと律を成し、巨大な世界へと成長した。 頂上に君臨する女王蟻は幾度も交配を繰り返し、世界を広げ、それに仕える働き蟻や兵隊蟻は、身を犠牲にしてでもこの世界の歯車となっている。これがこの世界の理なんだろう。 ・・・人間の世界と大差ねぇな そう呟きながら俺は流れる汗を拭った。 扇風機がカラカラと音をたてながらぬめりとした風を送る。 テレビのワイドショーでは、雄弁な司会者が、 『次のコーナーでは今、接近中の彗星につ・・・』 などと、俺にとってどうでもいい情報を垂れ流している。 そんないつもと変わらない日常の中、いつもと変わらず水槽の側面から蟻の世界を眺めていた。 俺はこの広がる世界のために水槽を巨大化し、その世界に見合う充分な餌を与え、時には天敵を放し蟻達の闘争心や自立性、危機察知能力を高めた。 蟻達にとって俺はこの世界を統べる者であり、神的な存在なのである。 しかし、あいつらは気付いていない。 いや、気付かないと言うよりも認識できていないのだろう。 俺と言う巨大な存在は、その姿や行為まで、蟻達では到底理解できない領域なのだろう。
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