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まぁ蟻が俺の存在を認識しようがせまいが、そんな事はどうでもいい。俺はこの世界を心から愛してるのだから。
ただ、それも終わりに近づいている。
この世界に終焉を与えなくてはならない。
蟻達は俺が差し出すがまま、勝手なままに世界を広げ増え続けた。世界の限界など考えず、自分達の理を押し通してきた。
そんな理などまかり通るはずもない。
自然の絶対的論理は共存である。それを考えもしないこの世界は、不必要な物でしかない。
俺は終焉の方法を考えた。
俺の存在を認識できないのであれば、認識できないまま終わる方法がいいだろう。
ふと先程の司会者の言葉が浮かぶ。
そうだ、あれがいい。何もわからないまま、何もできないまま終わるのが、この広がった世界に合っている。
俺は水槽を大破させることにした。拳大の石を水槽の上に落とし続ける。この世界が跡形も無くなるまで。
それから二日後、その日を迎えた。
俺はこの二日間で大量の石を集め、軽トラの荷台に置いた。後は真下にある水槽めがけて石を落とすだけ。
最後にもう一度水槽から世界を覗く。蟻達はいつもと変わらない世界でいつもと変わらない行動をしていた。
俺はそれを細目で見ながら呟いた。
「これは俺が造り出した世界。俺がやらないと・・・」
そう自分に言い聞かせながら、俺は車の荷台の昇降機レバーに手を置いた。
少し力を入れるとゆっくりと荷台が上がる。
石の重たさを感じる音が一つ一つ遠くなる。
水槽の粉砕音は一度だけ聞こえ、後は徐々に軽快な音に変わっていく。
すべての石が落ちた時、俺は運転席から空を見上げた。視線の先には真っ白な太陽が目を開けれないほど光っている。
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