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「なんか、今日の紫杞、ソワソワしてない?どうしたの?」
休み時間に俺の席に訪れたトオルが言った。しゃがんで机の上に顎を乗せた状態で喋るので、振動が僅かに伝わる。がたがたがた。
弟のように、って言うと同年代だ!って怒るけど、なんか可愛がりたくなっちゃうトオル。
でも今は、凄く、…なんだろう。
悪戯したくてウズウズしてる猫みたいな顔で笑ってる。可愛くない、むしろ怖い。
「そうかな?」
「うん、そうだよ!ついでにいうと慶次郎はニヤニヤしてて気持ち悪かった!」
「…そうなんだ」
「お前ら分かりやすくていいなー!明日デートか?どこ行くんだ?」
キラキラと擬音が付きそうなくらいに輝かしい笑顔で有無を言わせぬ猛攻。
隣に立っていた律がコラ!とトオルをたしなめるも、興味ありげな視線を寄越してきた。
君らも、十分、分かりやすいと思うよ。
「明日、けーじろと、紅葉狩りに。少し、遠出するんだ」
「へー!いいなー、俺ももがっ」
「うん、いいね。丁度見頃だろうね。ね、トオル?」
「律、何すんだよ。まぁ、今朝のニュースでもお姉さんが言ってたからな。綺麗なんじゃね?」
楽しみだな、って思ったらなんだか更に楽しみになってしまったようで、目の前であったかく笑う2人に俺も笑顔を返した。
次は、友達皆で遠出するのも良いかもしれない。
トオルと、律と、京輔も呼んで、それから下の学年の子たちを誘ってみても楽しいかもしれない。
あ、でも、あんまり大人数だと慶次郎と一緒にいれなくなっちゃうかな…?いっつも、色んなところ走り回って、おれは途中でついていけなくなるから。
うーんうーん、と唸り始めたおれにどうしたの?と聞く律の声に被せて、別の声が聞こえた。
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