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「紫杞?具合悪い?」
首の後ろ、うなじあたりにひんやりした温度が伝わった。
慶次郎がきた。
「ううん、大丈夫。ちょっと、考えごと」
「…そっか。良かった☆」
少し眉を八の字にさせて笑った。心配させちゃった。
なんでもないからね、って言ったらぐしゃぐしゃと髪をかき撫でられた。
「ちょっとちょっと。紫杞は今、俺らと喋ってたんだけどー?」
「なんだ、何か文句あるかー?」
「大ありですぅー!」
「俺がいちゃ不都合でもあんのか!言ってみろ!」
直ぐさま賑やかになった2人を律とおれで苦笑いしながら見つめる。いつもの風景だ。
困った顔、してるけど、やっぱりトオルを見る律の眼差しはいつだって優しい。おれもあんな顔して慶次郎のこと見てるのかな。
少し離れた場所で言い合ってたと思ったらなぜだか爆笑し始めて、戻って来る頃にはニコニコ笑ってる。
笑った顔のまま、おれに手を差し出して。
「一緒に帰ろうぜ」
頷いて、そっと指先を握った。
明日は、沢山慶次郎を独り占めしよう。2人の時間をいっぱい楽しもう。
お弁当を持っていく、と言ったら慌てておれを止めた慶次郎の顔を思い出しながら握っていた手を繋ぎ直した。
慶次郎がこうやって手を繋いでくれるのはおれだけだもん。
それに、楽しそうに笑ってるところを見るのは全然嫌じゃない。
明日の予定と、その次と、きっとずっと先のいつかの予定にも慶次郎は居る。
「明日、楽しみだね…!」
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