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「けーじろー」
おれが名前を呼ぶと嬉しそうに笑いながらどうした?って聞いてくれる。
おれはそれが嬉しくて用もないのに名前を呼んだ。
呼ぶと、隣に来てくれる。いつの間にか、おれの隣にけーじろーばかりが並ぶようになった。むしろ、けーじろーが居ないと落ち着かない。
すきってこんな感じなのかな。
彼が他の誰かと話していると、横目で何度も窺ってしまう。
他の誰かと話しているのに、彼ならこう言うだろうなぁ、と違う方に考えがいってしまう。
ふわふわする。あったかい。ずっと側に居たい。もっと名前を呼んでほしい。
でも、いつも、あの顔を思い出してしまう。
もう少し待って。そう言ったけーじろーもやっぱり、辛そうで泣きそうで、なのに笑う。
下手くそな笑顔だね。だから、おれは。
「大丈夫だよ」
けーじろーのかわりに笑ってあげる。
待ってる。待ってる。
大事な何かを乗り越えようとしてるけーじろーを、おれは近くで待ってるよ。
いつもおれのワガママを聞いてくれるけーじろーが、もっと、おれにワガママを言ってくれればいいのに。なんて、思いながらおれは小さく見えた背中を優しく撫でた。
伝われ。おれの、気持ち。
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