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耳をすませば、遠くから自分を呼ぶ声がする。 眼下には白い雲と青い空が広がっていて早く飛び込んでおいでと誘う。 「今、そっちに行くよ」 声の主には届かないけど、小さく呟いた。 手に持っているレースのついた真っ白の傘を広げた。 「せーのっ」 掛け声で大きくジャンプする。 自由落下に従って少し落ちると、下から大きな風が吹き上げて傘に空気が含まれる。 ふわふわと重力に逆らって浮かぶ。もともと重力という概念が存在しているかどうかも怪しいが。 身の回りを覆っていた雲が風に流され、次第に視界が開けていく。 雲のしたには大きな大きな街が広がっていた。 中世ヨーロッパのようであったり、江戸時代のようであったり、はたまた開拓時代のアメリカのようであったり、むこうには中国の宮廷のような建物も見える。 ピラミッドもスフィンクスも神社もお寺もある。 そして中心には無機質なただの円柱がそびえていた。 ところどころ黒い穴が空いている。 円柱は今自分が居るところよりもさらに高く、頂上が見えない。 きっとあそこに行けば良いんだろうけど、頂上も見えないようなところにどうやって登るのだろうか? とにかく近くに降りてみよう。 円柱に近寄ろうとした途端、風向きが変わり向かい風に押し流された。 流されながらどんどん高度が落ちていく。 なんとか流されまいとふんばってはみるが所詮無駄な抵抗である。 そのまま円柱から遠ざかりながら緩やかに落下していった。
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