2057人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
kiss 4 [恋と、友情と、]
「ええ~皆様ぁ。
おはよぉ~ございますぅ。
本日の朝礼はぁ、
不在の四方山部長に代わりぃ、
課長の辻田が一言ぉ......」
背後でアクビを
炸裂しそうになった小栗に向け、
肘撃ちを仕掛けた。
途端に、空気を飲み込んだ彼の前で、
素知らぬ顔をして
課長のありがたーーい
今日の一言に耳を傾けていた。
四方山部長のワンポイント的な
活力みなぎる、お言葉とは程遠く。
眠気を誘う
ワンテンポ調に瞼が重く圧し掛かる。
あ~~。寝る....
既に....寝.......
ギャ!!
突然、膝裏に足を入れられ、
ガクッと膝を折り、
よろめいた勢いで隣に並んでいた
新人男子の大野君に
しがみついてしまった。
「ご、ごめんなさい」
かなりビックリした顔をされ、
苦笑いを浮かべる大野君。
「いえ、気にしないでください」
ヤバ。
後輩に気を使われてる。
そして仕掛けたのは、
背後で、辻田課長の熱弁に
賛同し頷くフリをする小栗優斗。
ほんっと、朝っぱらから、
むかつくんですけど。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
そして定時。
既に赤札ついて、小栗は退社。
消えていない社内のホワイトボードには、
「アールシー・ジャパン本社→直帰」の文字。
ということは、
先方の会社に乗り込んだ後、
そのまま四方山部長と、夜の接待へと向かったわけだ。
まあ、
いつものことである。
パソコンの電源を落とし、
ちらほら残る営業部の新鋭たちにご挨拶。
「お先に失礼致しま~す」
「舞ちゃん、おつかれ~~」
「おつーー」
「お疲れ様です!!」
席から立ち上がり、深々とお辞儀をしたのは大野君。
君は、真面目で大変よろしい!
そして、あと数年もしたら小栗と同じように
営業マン特有の
多重人格の皮肉屋へと、変化するのだろう。
ああ、そのまま純なままでいて欲しい........
そんな願望を抱きつつ、私は、女子会へと向かう。
社内の広々とした化粧室で、
夜メイクに替えて、
ほんの少しだけ香水をプラスする。
女子会なのだが、
本日はゲストが来るらしい。
いつも以上に、
グロスをたっぷりつけるのも、
マスカラを、丁寧に塗るのも、
ちょっと浮き足立っているからだ。
ゲストとは、すなわち男子!!
どんな男子がやってくるのだろう........
ああ楽しみ!!
.
最初のコメントを投稿しよう!