kiss 4 [ 恋と、友情と、]

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あれ? ゲストは? お一人様ですか?? 「あれ? お供がいないけど 誰か連れてくるんじゃなかった?」 モリリンが、 既に食前酒で上気した瞳を向けて レーナに尋ねた。 「来るわよ。ほら、来た」 レーナが振り返るのと、 ほぼ同時にスーツ姿のオトコが 席に近づいてきた。 ほんの少し手を小さく振る、 爽やかな笑顔。 そして後ろに 同じくスーツの男性が 二人、連なっている。 あれ? ゲストって一人じゃないの? 本日のゲストは3人。 「やあ、遅れて申し訳ない」と、 笑顔で挨拶をする、男性達。 一番最初に 席を立ち上がったのはモリリンだ。 私もなっちゃんに 腕を掴まれて無理やり立たされ、 みんなが席を立ったところで、 レーナが私達を紹介し始めた。 「こちら、大学時代の友人達。 図書館司書の森元 凜。 大手電機メーカー、 バビロンCoに勤務する佐藤 舞。 ……と、 弁護士の妻の積田 奈津子」 レーナはあえて、 そこで噴出すことを狙ったのかは判らないが、 一番涼しげな表情を湛えていた、 チャコールグレイのスーツを着たオトコが 小さく、クスリと笑った。 人妻の何が笑える??? 既に女としての人数合わせで、 あぶれているなっちゃんは そのまま、一歩 私の背後へと身を引いた。 彼女の絶やさない笑顔とは裏腹に、 相当、 腹の中は煮えくり返っているだろう。 ゲストの一人が、 なっちゃんを鼻で笑ったことなど 気づいていないのか、 レーナは紹介を続ける。 「で、こちらが、 わが社のエースディーラー達。 左から向井 真(ムカイ・マコト)君 成宮 弘武(ナルミヤ・ヒロム)君。 私のアシスタントの 永澤 隼人(ナガサワ・ハヤト)君」 中央に位置する 成宮 弘武(ナルミヤ・ヒロム)が、 まず最初に名刺を出して挨拶をした。 この中で一番年配っぽい 雰囲気を醸し出している。 年齢は30代後半といったところだろうか......。 パリッとした オーダーメイドのスーツを着こなし、 撫で付けたオールバックの髪型が 妙にマッチしていた。 仕事の出来るオトコ。 そしてレーナと同じ、 ほんの数秒間で 何十億円というお金を動かす市場の狼達だ。 だが先ほど、 人妻なっちゃんを笑った人物が この成宮 弘武氏である。 ウーム。いけ好かないタイプだ。 .
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