2929人が本棚に入れています
本棚に追加
「一つ.....
伺っても良いですか?」
「なに?」
「先日。
レーナ達と食事をした時に、
なっちゃ。あ、えと。
積田 奈津子、
.......友人のことを紹介された際、
成宮さん、笑いましたよね。
あれって、
どうして笑ったんですか?」
ストレートに聞いた。
どんな理由であれ、
私は彼を好きになる事は無いだろうと思えた。
一瞬、成宮さんの表情が固まり、
「ああ、あれね」
と、記憶の彼方から取り出した、
失笑した一瞬の出来事を思い出したのか、
口元を緩ませた。
其の顔が嫌いなんです。
すごく人をバカにしてる感じがする。
ホント、やな感じだ。
「いや、友人の紹介の仕方がね。
飯島らしいなあと思ってね」
へ?
「飯島が君達を紹介した際に、
名前の前に肩書きを付け加えただろ?」
「君の場合は、
『大手電機メーカー勤務』という肩書き。
もう一人の友人は『図書館司書』という肩書き。
そして、『弁護士の妻』という肩書きだった」
「職を持たない彼女にとって、
妻であるというのが、
ある意味、彼女の肩書きなのかと思うと、
なんだか滑稽に思えてね」
何処が滑稽なんだ?
わからない。
「弁護士の妻って飯島がつけた肩書きは、
弁護士の旦那さんという看板を使って、
土俵入りしているわけで、
彼女自身を表す表現ではない。
他に彼女に付加する
言葉はあったのではないか、
会社名等という肩書きを、
そもそもつける意味など
無かったのではないかと思えた。
君がどうかは判らないが、
僕が日皇証券の人間だからと考えて
この場所に来たのだとしたら、
それは大間違いで、
明日には会社から追い出されて、
肩書きなど無くなる
可能性だって大いにある。
僕という人間は、
会社の名前で判断なんか出来ないし、
されたいとも思わないからね。
だから思ったんだ。
大手銘柄を選り好んで
投資をするスタイルの、
飯島らしい
肩書きのつけ方を、
友人に対してもするんだな、と。
笑った理由は、
そういう理由だよ」
.
最初のコメントを投稿しよう!