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「名刺を、ケータイの待ち受けにするって、
どれだけそいつの事好きなんだよ」
小栗が馬鹿にしたように、言葉を放る。
「悪かったわね。アンタの周りを囲む女子と違って、
私は好きな人に対して謙虚なんです」
思わず反論。高嶋さんとのツーショット写真なんて、
軽々しく「待ち受けにしたいんですぅ~お願いしまーす!!」なーんて
頼めないのよ(小心者だから)
ふてくされていると、
小栗は、私の顔を、さも面白いものでも見るかのようにまじまじと眺めていた。
「ふーん。佐藤の好きな奴って、あの、刑事さんなんだぁ」
う.....
やばい。口滑った....。
悪魔の微笑を湛えた小栗が、私の顔を覗き込んだ。
「ふーん。佐藤って面食いなんだな」
嬉しそうに呟く小栗に反論の余地無しです。
「好きなんだ。あの刑事さんのこと」
小栗が再度私に確認をする。
今更否定は出来ない。
「....うん」
好き......だよ。
小栗に言った後、胸の奥が、きゅうと縮こまった気がした。
「そろそろ、行く時間だぞ」
そういって小栗は私の頭にポンと手を置いたあと、さっと席を立った。
「うん。急ぐ」
小栗は普段と変わらず、
新聞を丁寧に折りたたんで、洗面所へと消えた。
私は何処か胸の奥に冷たい風が通り過ぎていく気がして、
でもその風が、何処からやってきて、どうして、私を巻き込んだのか、
判らなかったけれど、
「友達です」っていう言葉。
小栗の口から聞きたくなかったよ。
「高嶋さんが好き」って言う気持ち。
知られたくなかった。
私と小栗の間に在る境界線の存在を、なんだか再確認。
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