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kiss 10[ 終ってる女]
早朝 四谷署にて、
警官立ち会いのもと、犯人の判別確認に呼ばれる。
犯人の男はタイ国籍の不法滞在者。
空き巣以外にも、窃盗事件11件。強盗致傷事件6件という、
重犯罪者であったことを明かされた。
つまり、私があの時助かったのは、かなり幸運だったということだ。
たかが空き巣犯ごときに、
捜査本部を設置するぐらい大掛かりだった理由も、
今となっては、頷けるのだが....
だったら最初から教えてくれ!!
.........と言うのは、
やはり一般市民の警察に対する代表的意見ということで。
(チキン野郎)
私の隣で、パンチの極太眉毛が、上に釣りあがる。
マジックミラー越しに、
貧乏ゆすりを続ける、苛立った表情のオトコの顔を眺めた。
「間違いありませんね」
「はい...」
「あの唇を、見間違うわけありません!!」
ビシッと、指を差し犯人をミラー越しに睨みつけた私。
途端に、マジックミラーの前で、いかつい刑事2人が同時にブホっと噴いた。
あの異様なタラコ唇に、誰も気づかず犯人は1年近く逃走していたのだよ。
警官達よ、もっとしっかり目を開いて捜査してくれたまえ!!
と、高嶋さんが担当から外れたことで、180度、意見を変える。
朝の5時に起こされ(起きてた)
さらには朝っぱらからやーさん二人に拉致られて(四谷署刑事)
挙句の果てに、逮捕先の別署から移送されるまで
2時間も署内の狭い箱の中で放置される始末。
しかも.....小栗の話も聞けず仕舞い。
あーー最悪な朝です。
「なんだったんだろ....小栗の話....」
まさか告白!
「うわ、絶対あり得ない」
犯人逮捕に至った今となっては、
もう小栗家に寝泊りする必要もなくなったわけで、
晴れて我が家に帰れるのだが、
なんだか、不完全燃焼っといった感じがするのは私だけでしょうか?
「では、公判に入りましたら担当検事のほうから、
証人尋問の書類を送付いたしますの、宜しくお願いします」
パンチに笑顔で見送られ、刑事課を後にする私。
スローモーションで足を前へと進ませる。
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