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「こんにちは。書類お持ちしました」
東野さんの透明感のある声が響いた。
男子達が、そわそわし始めたが、お目当ては野猿ドモではない。
「東野さん、ここここ!!」
私が手招き。
「ごめんねー、今さ、手が離せなくって。
わざわざ総務課から持ってきてもらって助かった~~」
「いえ。丁度時間がありましたので。
お気になさらないで下さい」
彼女は小さな手を、小さく左右に揺らした。
「あ、お茶でもどう??」
椅子から立ち上がり、私の椅子に座るように即した。
「いえ、そんな、」
恐縮する彼女を無理やり席に座らせて、
私は、その場からさっさと立ち去ることにした。
「遠慮せず~。
挽き立てのコーヒーご馳走するから、ちょっと待っててね」
「では、ちょっとだけ」
そして、東野さんをマイ席に置いた状態で、
私は、上手いこと離席。
その隣で、
がっくり落ち込んでる小栗は、ピクリとも動かない。
よおし! 二人きり成功!!
とガッツポーズの私。
休憩室で、みんなの分のコーヒーも淹れて、
たっぷり時間をかけてから、オフィスへと戻った。
って小栗いねーーー!!
皆様、
小栗は何処へ消えたんでしょう.........。
私の席にポツンと座る東野さんに、小栗の行方を訪ねた。
「小栗は?」
「外勤に出ると、おっしゃられてました」
「あ......そうなんだ」
っち。逃げやがったな。
「私.......
もう行きますね」
東野さんが、椅子から立ち上がる。
ちょっとは、小栗と話せたかな。
進展してればいいけど。
「じゃあ、また」
と、微笑んだ東野さんの異変に気づいた。
あれ。
東野さんの目蓋。
ナンカちょっと目が赤くなってる。
いったい何があったんだ?
「なにか.........あった?」
「な! なんでもないです」
そう、儚げに微笑む東野さんの瞳からポロリと涙が零れ落ちた。
あんん.........の馬鹿!!
小栗......帰ってきたら即殺!!
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