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☆☆☆
「佐藤、一緒に帰ろう」
「うん。ちょっと待ってね。杉田君」
満面の笑みを湛えて私は杉田君を見上げる。
デスクの電気を消し。PCの電源OFFをチェックした。
よし、忘れ物なし!
口をあんぐり開けて、私を見ているのは小栗だ。
「小栗も一緒に帰る?」
杉田君が優しさをかける。
「いい。お疲れさん」
軽く手を挙げて、またキーボードを叩き始めた。
さりげなく杉田君が私の手を握る。
チラリと小栗へと、振り返った。
すると小栗は、またぼうっと、杉田君の背中を眺めている。
そしてスグに画面に視線を戻した。
営業部を出る数メートルだけ。
恋人のフリをする私達。
そして、エレベーターに乗った瞬間、手を離した。
杉田君が大きく溜め息をつく。
「あいつ...、乗ってくるかな?」
「わかんない。でも恋するカップル見ると恋したくならない?」
それは私の持論。
友達が彼氏が出来て、うきうきしてるのを見ると
私も彼氏欲しい~~と思う。
結婚式に参列するたび
結婚したーーいって思う。
きっとナッチャンが子供を生んだら
子供欲しいよ~~~って思うだろう。
それは、幸せな笑顔と密接に繋がっている。
かつて見たことの無いような笑顔を見せる人が
笑顔になる理由が何なのか判ったら、
そのキッカケになっている出来事に嫉妬するぐらい羨ましく感じる。
この前みたいに、
小栗が仕事楽しい~~~って言ってる時の笑顔を見た時に、
羨ましい私もそんな仕事したい!!って感じた。
きっと、笑顔は、人を動かす力があるんだ。
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