kiss 15 [アイシテル?]

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そして給湯室。 何故かココが私たちのマストな戦略室となりつつある。 小栗に内緒の話をするには、 私と小栗の席は近すぎていて、 杉田クンと私の席は離れすぎている。 お互いちょっと寄るには丁度いい場所、 そして 多忙な部署のため、 お茶飲む暇もない彼らが立ち寄らない場所。 それがココだ。 「いいよ。小栗を週末にでも、飯に連れ出すよ。 まだ、約束の焼肉、奢って無かったし...」 挽き立て、入れたてのコーヒーをすする杉田君。 さすがイエスマン杉田! やはり君を選んで間違いなかった!! 「助かる!! 感謝します!」 「佐藤も来る?」 「いいの? 奢り?」 ちょっと調子に乗ってみる。 「いいよ。ボーナス出たし」 「やったーーー。杉田君、太っ腹!!」 諸手を挙げて喜んだ。 「それでさ、佐藤.....」 なにやら照れて言い出し辛そうに口籠もって、鼻の頭を指先で掻いた。 うんうん。わかってるよ、君の事ぐらい。 「春香さんも誘ってみよっか?」 「え?」と驚きの顔。 「奢って貰うし。今までのお礼も兼ねて、 春香さんと二人きりにしてあげるから! 落とせ! 男を見せてくれ! 杉田君!」 背中をバンバンと叩き、気合を入れてあげる。 「あ、ああ。うん」 照れた表情で頭をかく杉田君。 ああ~いいな~~恋か。恋か。 羨ましい。恋っていいな.....。 恋........。 思い出したように、 携帯電話の待ち受け画面を眺めた。 イケメン刑事様の名刺が画面に映る。 私の、恋する王子様だった人。 そして王子様の理想のお姫様には私は程遠くて、 白馬に跨り、城から逃げ出していった。 「そろそろ、待ち受け変えよう.....」 身を焦がす、狂おしいほどに人を愛する事....。 また、私に出来るんだろうか。 そんな相手に、巡り会えるのだろうか。 「早く忘れよ」 携帯に映る、淡い恋を患った紙片の痕跡と共に、 恋に変わったアイツへの想いも一緒に消し去った。
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