kiss 15 [アイシテル?]

26/32

2337人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「おっほん」 ......? 「おっほん」 .......? 「もしもし?」 背後から、声をかけられた。 もしや、職質? 「私は不審者ではありません!!」 と 言おうとしたところ、 見慣れた顔を見て悲鳴を上げそうになる。 見慣れた顔とは、 つい先ほどまで、ニンニクまみれになっていたあいつだ。 きょとんとした顔をして、小栗が私に尋ねた。 「なにしてんの? 佐藤」 思わず指差して、叫ぶ。 「あんたこそ! 何してんの!」 手に取った、ポカリのペットボトルの蓋を閉じながら小栗がいう。 「別に、ちょっと一服してから電車に乗ろうかと思ったら、 変質者が、覗きやってるからさ、念のため、声掛けただけ」 変質者? っって....私のことか....。 先日の小栗とのやり取りを思い出した。 あれ以来、 小栗と話すのは、ちょっと苦手だ。 「デートは? 遅刻するよ」 さっさとココから立ち去って下さい。 「ああ。あれ? 嘘に決まってんだろ?」 平然と嘘をバラス小栗。 「うそ??」 なんだと!! また冷ややかな視線で、私を見た。 其の目が恐くて、ほんの少し後ずさる。 口元には蔑んだ含み笑いが湛えられていた。 「杉田もお前の仲間だからな。くっつけようって魂胆見え見え。 女が居るってわかったら、あっちも諦めるだろ?」 冷酷さながらの表情で、私の計画が全てお見通しであることを告げる。 店内では、職場の仲のいい同僚の姿を演じていたのに、 二人きりになった途端、 小栗の笑顔は、立ち消えてしまう。 私への嫌悪の様子を再実感して、 鼻の奥が、つんと、鈍く痛んだ。 泣きたくなんか無いのに、 胸の奥から湧き上がるのは、 自分ではどうにもならない、小栗と私との距離感。 それでも、 どうにか、普段の私を演じる。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2337人が本棚に入れています
本棚に追加