2337人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
☆☆☆
彼女の名前を出した途端。
小栗の顔色は急変する。
いつもそうだ。
彼女の名前は、一種のスイッチが小栗の中で入る。
拒否、
拒絶、
完全に心を閉鎖するキーワード。
それが
東野さん、彼女の名前だ。
だから今まで誰からの依頼なのか、はっきりとさせなかった。
彼女を意識すれば、拒絶は更に強まる。
もっと早い段階で小栗は、全てをシャットアウトしただろう。
しかし、手を打たなければ、小栗の気持ちは変わらない。
そして、
東野さんであると気づけば、
彼の中で何かが変わる。
私は其の一筋の光に賭けた。
「東野さんと。彼女とよりを戻してよ」
ラストチャンス。
其のつもりで、私は彼女の名前を出した。
小栗の表情が固まる。
そして俯いて、小さな声で私に尋ねた。
「彼女.....俺とのことなんて言ってんの?」
「モトカノ...でしょ....」
小栗は黙り込む。
最初のコメントを投稿しよう!