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「でもって、小栗が振ったってことも聞いた」
「あ、、そ」
小栗は頭を抱えて、私から視線をそらした。
「仕事を理由に、
東野さんを振るなんてさ、ぶっちゃけありえないって」
「何だそれ、そんなの佐藤の基準だろ?」
「でもさ、彼女はまだ小栗のコト好きだよ」
「ふーん」
「ふーんって、何其の反応!」
「知ってる」
え?
「あいつが俺のこと好きなの、知ってる」
散々すっとぼけてきた小栗に、眩暈がした。
知っていながら其のリアクション?
そこまで冷血漢の悪魔だとは......。
「知っていたのに、
彼女に対して冷たい態度取ってたんだ。
信じらんない」
「期待させる素振りをするより、ずっとましだと思うけど?
好きじゃないのに好きな振りする、お前のほうがよっぽど信じらんねえよ」
「......それって、杉田君のこと言ってんの?」
つい口を滑らせた。
嘘で塗り固められた関係を、
簡単に引き剥がす台詞を口にしてしまった 。
「.....やっぱな」
確信を得た答えに出会えたことで、小栗の瞳はキラリと光る。
「な.....なにが?」
「あいつのこと好きじゃないんだ」
「そんなこと....ない..デス....」
後ろめたさに、俯く。
小栗の視線から逃げるしかなかった。
自分からボロを出してしまい、訂正のしようがない。
また.....冷酷そのものの瞳で、私を小栗が見つめる。
「引きつった笑顔で笑って何が楽しい? そんなに嫌われたくないか?」
小栗の追求は強まる。
「誰からも愛されて、うわべだけ繕われてればいいのか?」
痛いほどに突き刺さる言葉達。
「私のことは、どうでもいいよ」
つい、逃げ腰になる。
「良くねえよ。良くないから言ってんだろ」
けれど小栗は、喰らい付いて離そうとはしない。
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