kiss 15 [アイシテル?]

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「いいの! 今は小栗の幸せの話をしてるの」 話題から、引き剥がそうとしたけれど、 小栗は、怒りの矛先を向けたまま突き進んでいく。 「幸せ? それはお前のおせっかいだろ」 ズキン。 「お前がしてるのは親切の押し売り、 俺も、アイツも、迷惑でしかねぇんだよ」 ズキン。 「お前の基準で人の幸せを測るなよ」 ..........ズキン。 「お前の願望を、あいつに押し付けるのって傍から見てて見苦しいんだよ」 ……ズキン、ズキン。 「空回りしてるの、気づかない? お前のやってることは偽善でしかないってこと。 ったく、何処まで馬鹿なんだよ....…」 再起不能。 ............完全に凹みました。 「...........帰る」 せめて、 杉田君と、春香さんの行く末を確認しようと思っていたけれど、 もうそんなコトする心の余裕。 私にはございません。 家に帰って、 パックして、寝ます。 「ちょ、まて。佐藤」 と、慌てた様子で小栗は、私の腕を掴んだ。 そしてなぜか、 電信柱と店の壁の間に押し付けられる。 「な、なに?」 この期に及んで、お前は、何をしたいんだ??? これ以上、私に何を言いたい?? もう十分、傷ついたし、自分が最低な人間だって判ったよ!! もう、これ以上、一緒にいたくないよ。 怨みを込めて小栗の顔を見上げた。 けれど、そこには、 通りの先を見つめる、小栗の驚愕の表情があった。 .........なに? 何を見てるの? ふと、視線を上げる。 小栗の見つめる先には、 先ほど我々が後にした焼肉店がある。 店から出てきたのは、杉田君と春香さんだ。 杉田君の腕に抱きついて歩く春香さん。 あれ? てことは、 杉田君。無事成功した??? よかったぁ。と、心の中で、小さくガッツポーズをするわたし。 しかし小栗の顔は険しく、 私の視線を遮るように、小栗の腕が私の眼前へとサッと伸びた。 視界は暗闇の中へと変わる。 「なに? ちょっと小栗?? 見えないんだけど」 「見るな」 小栗が鋭く呟いた。 見るなって........杉田君を?? えーと......。 その辺ちょっと相違が在るんだよ、小栗君。 「きゃ!!」 突然、乱暴に腕を掴まれた。 小栗が歩きだす。 早足で歩く小栗に、引っ張られながら歩を進めた。 「ちょっと!! 小栗!! そっちは駅じゃないですけど??」 小栗に、針路を指摘したが、歩みは止まらない。 無言の横顔は、何処と無く怒っているように見えた。 私は、また彼の地雷を踏んだのかもしれない。 「小栗? 一体何処に行くの?」
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