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kiss 17 [Moon Crying]
「男のいない世界」
そんな場所が在るなら、今すぐ行きたいものである。
其処が、恋に傷ついた女の墓場だとしても、
灼熱の炎に身を焦がす日々を送るより、ずっとマシだ。
手に入らないと判っているものを、追いかけ続けなくちゃならないなんて
拷問もいいところである。
時計の秒針を眺めた。
カチカチ動く間隔は乱れることなく、永遠を奏でる。
秒針の移動する様を凝視することが仕事であるかのように、
真剣な眼差しで見つめた。
チュポンという、卑猥な音を立てて、
唇を離したのは、レーナとキスフレのメンズ。
銀髪にブルーアイズの彼が、
レーナの頬を優しく撫でて、さよならの言葉を告げる。
今度は、軽いついばむようなキスをした後、彼は車に乗り込み消えていった。
もう私の中でレーナは異星人である。
キスフレ仲間は卒業した。
レーナは、オトコが消えた後、私に振り返って、
「さてと、後は二人で飲み直す?」
と、女子会の誘いを告げた。
せっかく早く上がれた花の金曜日だというのに、どうにも、気乗りしない。
理由は......。
まあ小栗のせいですけどね。
あれ以来、小栗の誘いは断り続けている。
小栗と二人っきりになれば、またあの部屋で起きたみたいに、
キスフレを演じなくちゃならない。
それは結構自分の中で堪えることで、
ドキドキが欲しいとか、
女を感じたいとか、
そんな悠長な事言ってらん無くって、
二人きりになったら、
たぶん「小栗が欲しい」って強請ると思う。
間違いなく私は、アイツのセフレに落ちる。
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