kiss 17 [Moon Crying]前半

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人工的に作られた岩場にかかとを乗せて、 気持ち良さそうに夜空を見上げるレーナを眺めた。 月夜に照らされて、白い肌が更に青白い光を放っている。 滑らかな肩にデコルテ、 丸みを帯びたライン、しなやかな体に、ついつい見とれてしまう。 レーナの身体は、 学生時代から続けているゴルフで、鍛え上げているからだけでは無く、 素敵な恋愛をしてきたことによる自信が、 身体の内側から滲み出ている気がした。 私には到底到達し得ない、悩ましいエロティックなフェロモンに ノックアウトされそうになりそうで、 思わず視線をレーナから、空を照らすクレーターだらけの月へと移した。 私は、きっと月だ。 遠くから眺めている間は見えないものが、 近づきすぎたら、全てさらけ出されてしまう。 沢山の深く抉れて穴ぼこだらけの大地には、 朽ち果てた世界が一面に広がっている。 誰も踏み入れない土地。 好奇心だけで辿り着いたとしても、 永遠にそこに居たいとは思わない。 そんな月と私は、良く似ている。 永遠の愛など、求めるだけ無駄なのだ。 きっと愛されるのは、 自ら光を放ち、彼らに恵みと命を与える存在。 大きくてまぶしくて光り輝く太陽。 私は太陽には、なれない。 ずっと冷たい夜の闇の中で、 大好きな彼が振り向いてくれるのを待つことしか、出来ないだろう。 そして、 小栗が私に気付いて、空を見上げてくれたら.....。
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