kiss19 -笑顔の仮面-前半

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----------- その数週間後、 皆元さんは、あの日、6階のトイレで佐藤と揉めた男と式を挙げた。 寝耳に水な電撃結婚で、既に妊娠中だという発表に第二営業部のみんなは驚いた。 佐藤と俺は、同期である事も関係してるのか、 挙式の参列から参加をし、 二次会からは第二営業部のほぼ全員が、顔を合わせることになった。 3次会が終わり、主役の二人がホテルの部屋へと戻った後、 主役のサポート役を務めて、終始気を張っていた佐藤に、飲み直そうと誘った。 アイツは、ようやく肩の荷が下りたのか、ホッとした表情を俺に向けて、 「いーよ」と言って笑った。 横浜での挙式だったため、 皆元さんが気を利かせて、俺達を含め、会社の同僚の為に部屋を取ってくれていた。 と、いっても使用したのは 独身組のごく僅かで、既婚者組は、さっさと二次会の時点で消えている。 佐藤と俺は、家まで帰る道のりを気にしなくていいからか、 酒の分量も、酔い加減も大して気にしてなかった。 おそらく佐藤は、家に帰るとか、 翌日の心配だとか、そういった考えは、既に頭には無く、 今日起きた出来事の全てを忘れてしまいたい、 ただそれ一点につきるだろう。 「寂しいー。 みどりちゃんが居なくなったら、私一人ジャン~~」 「育児休暇終えて、お局さん戻ってくるから、 それまでの辛抱だな」 などと、俺が言っても佐藤が、終始、 「寂しいよぉー」 とクダを巻いていた。 佐藤にとって、 この結婚式は、ただの同僚の門出の日なんかじゃなくって、 魂を毟り取られるほどの痛みを伴うものだっただろう。 それなのに、未だにそんな素振りも見せず、 自分のオトコと友人が結婚したことに対して、 怒りも悲しみも見せずに、 ただ同僚が結婚して寂しい。としか言わない。 本音を一向に話さない佐藤に、俺は、いささか腹が立った。 「皆元さん、綺麗だったな」 と、意地悪を言っても、 佐藤は、 「うん....スッごくすっごく、可愛かった....」 などと言う。 本当に言いたいことは、もっと別のことのはずなのに、 佐藤は、その部分には触れない。 きっと触れた途端、 コイツは崩壊しそうだと、心の何処かで思った。
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