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佐藤の真の魅力は笑顔じゃなくて、
時折見せる、女の顔。
その瞳には、捉えどころの無い海の底の様にも見え、
触れられない程のダイアモンドの輝きを放つ。
息を飲むほどに、
妖艶な眼差しを向ける佐藤を、俺は今まで見たことが無かった。
その瞳に捕らえられると逃れられないなんて、知らなかった。
無防備で酒に溺れた佐藤にキスをする。
その唇は触れる度に、吐息を漏らし、流す涙で、俺の唇を濡らした。
佐藤の唇は、ふわふわとした綿アメみたいで、触れる度に潰れて甘い香りをさせる。
その甘美な感触を何度も味わいたくて、ついばむようなキスを続けた。
涙の流れる頬にキスを落とし、瞼に、おでこにもキスを落とした。
佐藤の髪を掻きあげて、首筋に触れると、ビクリと体を動かして、
熱の籠もった吐息を漏らした。
触れてはいけなかったんだ。
佐藤の肌の感触を、知らなかったら、
佐藤の誘いに乗らなかったら、
この部屋に入らなかったら、
二人きりで飲もうなんて誘わなかったら、
佐藤と出逢わなかったら......
俺は、今抱いている想いを知らないまま、
一生を終えていたかもしれない。
淡いピンク色のドレスの下につけたコルセットの紐を、
プレゼントのリボンでも解くかのように、ゆっくりと開いていった。
その下にあるのは、
淡いブルーのガーターベルトをつけた、
愛おしい人に抱かれるのを待つ、佐藤の姿だった。
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