kiss19 -笑顔の仮面-前半

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佐藤の真の魅力は笑顔じゃなくて、 時折見せる、女の顔。 その瞳には、捉えどころの無い海の底の様にも見え、 触れられない程のダイアモンドの輝きを放つ。 息を飲むほどに、 妖艶な眼差しを向ける佐藤を、俺は今まで見たことが無かった。 その瞳に捕らえられると逃れられないなんて、知らなかった。 無防備で酒に溺れた佐藤にキスをする。 その唇は触れる度に、吐息を漏らし、流す涙で、俺の唇を濡らした。 佐藤の唇は、ふわふわとした綿アメみたいで、触れる度に潰れて甘い香りをさせる。 その甘美な感触を何度も味わいたくて、ついばむようなキスを続けた。 涙の流れる頬にキスを落とし、瞼に、おでこにもキスを落とした。 佐藤の髪を掻きあげて、首筋に触れると、ビクリと体を動かして、 熱の籠もった吐息を漏らした。 触れてはいけなかったんだ。 佐藤の肌の感触を、知らなかったら、 佐藤の誘いに乗らなかったら、 この部屋に入らなかったら、 二人きりで飲もうなんて誘わなかったら、 佐藤と出逢わなかったら...... 俺は、今抱いている想いを知らないまま、 一生を終えていたかもしれない。 淡いピンク色のドレスの下につけたコルセットの紐を、 プレゼントのリボンでも解くかのように、ゆっくりと開いていった。 その下にあるのは、 淡いブルーのガーターベルトをつけた、 愛おしい人に抱かれるのを待つ、佐藤の姿だった。
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