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最初に自分の感情を止められなかったのは、桜の舞散る時だった。
皆元さんが去ってから、初めて迎える春の季節。
佐藤の困った表情が見たくて、キスをした。
案の定、佐藤は猛抗議をした。
「彼女でもない子に、そーいうことするのヤメテ下さい!!」とぶち切れた。
けれど、俺は嫌われては無いだろうと確信があったから更に、
「俺のこと、意識した?」
と悪戯半分で言うと、佐藤は更なる暴言を吐いた。
次のキスの時、
佐藤は何も言わずに、じろっと俺を見て、
「なにすんの?」
と睨んだ後、すぐさま何事も無く仕事へと戻った。
それには、かなり凹んだ。
つーかさ、
普通キスしたら、ドキドキして、俺のこと意識するもんじゃないの?
なんでキスしたのに睨まれんの?
「なにすんの?」って....なんだよそれ?
やっぱあの時、最後までして、朝日の中「おはよ」とでも言うべきだったかも知れない。
俺にとって、もう佐藤は、
女で、彼女にしたくて堪んないのに。
当の佐藤は、
俺はただの同僚で、ちょっとキス魔程度でしかない。
それはそれで、キスが出来るって言う点では、他より秀出てはいるけれど。
でもやっぱ、佐藤の中で俺はオトコじゃない。
「佐藤、呑み行かない?」
「いーよ」
いつも「いーよ」と返ってくる返事。
終電を越えたという佐藤に、「家に来る?」と言った時みたいに、
「佐藤。付き合って」 って言ったとしても、
きっと答えは、やっぱり「いーよ」なんだろうな。
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