kiss19 -笑顔の仮面-前半

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最初に自分の感情を止められなかったのは、桜の舞散る時だった。 皆元さんが去ってから、初めて迎える春の季節。 佐藤の困った表情が見たくて、キスをした。 案の定、佐藤は猛抗議をした。 「彼女でもない子に、そーいうことするのヤメテ下さい!!」とぶち切れた。 けれど、俺は嫌われては無いだろうと確信があったから更に、 「俺のこと、意識した?」 と悪戯半分で言うと、佐藤は更なる暴言を吐いた。 次のキスの時、 佐藤は何も言わずに、じろっと俺を見て、 「なにすんの?」 と睨んだ後、すぐさま何事も無く仕事へと戻った。 それには、かなり凹んだ。 つーかさ、 普通キスしたら、ドキドキして、俺のこと意識するもんじゃないの? なんでキスしたのに睨まれんの? 「なにすんの?」って....なんだよそれ? やっぱあの時、最後までして、朝日の中「おはよ」とでも言うべきだったかも知れない。 俺にとって、もう佐藤は、 女で、彼女にしたくて堪んないのに。 当の佐藤は、 俺はただの同僚で、ちょっとキス魔程度でしかない。 それはそれで、キスが出来るって言う点では、他より秀出てはいるけれど。 でもやっぱ、佐藤の中で俺はオトコじゃない。 「佐藤、呑み行かない?」 「いーよ」 いつも「いーよ」と返ってくる返事。 終電を越えたという佐藤に、「家に来る?」と言った時みたいに、 「佐藤。付き合って」 って言ったとしても、 きっと答えは、やっぱり「いーよ」なんだろうな。
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