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だから俺は、影に徹する。
佐藤に好きになって貰わなければ意味が無い。
こいつの「いーよ」で関係を持っても、
俺は、相当落ち込むだけだろう。
佐藤の視線が、ただの同僚から、違う色へと変わらない限り、
触れちゃ駄目だ。
これ以上触れれば、もっと深みに嵌る。
なのに、アイツの顔を見ると、俺の固く決めた意志は、簡単に崩れてしまって、
本能の赴くままに動く狼と、さほど変わらない失態を犯してしまう。
あの夜も、そんな日で、
元彼の好きだったCDをかけて、
あいつを泣かせて、
そのまま流れで押しちゃおうかなんて、そんな欲が先走ってしまって、
「慰めたい」なんて、そんな言い訳まで考えて、
気づいた時には、あいつに触れてた。
当然あいつは、俺から逃げたけれど、
俺は自分の気持ちを佐藤に告げたくて堪らなくなって、
あいつに、送ったんだ。
俺の気持ち、
佐藤が好きだって気持ち。
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佐藤の寝顔を眺めながら、ようやく纏まった告白の言葉。
眠るあいつの柔らかな頬に触れながら、思いは募って、
パソコンのカメラモニター眺めて、俺は佐藤に告白した。
今までの気持ち......全部。
家の鍵と共にぶら下げていたブルーのUSBを取り外して、
動画ファイルをUSBの中へと移動する。
俺の直ぐ側にあったコイツ(USB)に、俺の気持ちを乗せた。
後は、佐藤が開けるのを待つだけだ。
どんなに先であったとしても、俺は待ち続ける。
きっとそれが、
あいつに、愛を伝える唯一の方法だと思うから...。
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