kiss19 -笑顔の仮面-前半

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だから俺は、影に徹する。 佐藤に好きになって貰わなければ意味が無い。 こいつの「いーよ」で関係を持っても、 俺は、相当落ち込むだけだろう。 佐藤の視線が、ただの同僚から、違う色へと変わらない限り、 触れちゃ駄目だ。 これ以上触れれば、もっと深みに嵌る。 なのに、アイツの顔を見ると、俺の固く決めた意志は、簡単に崩れてしまって、 本能の赴くままに動く狼と、さほど変わらない失態を犯してしまう。 あの夜も、そんな日で、 元彼の好きだったCDをかけて、 あいつを泣かせて、 そのまま流れで押しちゃおうかなんて、そんな欲が先走ってしまって、 「慰めたい」なんて、そんな言い訳まで考えて、 気づいた時には、あいつに触れてた。 当然あいつは、俺から逃げたけれど、 俺は自分の気持ちを佐藤に告げたくて堪らなくなって、 あいつに、送ったんだ。 俺の気持ち、 佐藤が好きだって気持ち。 -------------------- 佐藤の寝顔を眺めながら、ようやく纏まった告白の言葉。 眠るあいつの柔らかな頬に触れながら、思いは募って、 パソコンのカメラモニター眺めて、俺は佐藤に告白した。 今までの気持ち......全部。 家の鍵と共にぶら下げていたブルーのUSBを取り外して、 動画ファイルをUSBの中へと移動する。 俺の直ぐ側にあったコイツ(USB)に、俺の気持ちを乗せた。 後は、佐藤が開けるのを待つだけだ。 どんなに先であったとしても、俺は待ち続ける。 きっとそれが、 あいつに、愛を伝える唯一の方法だと思うから...。
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