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ああ、そうか....。
この顔が、小栗の照れてる表情なんだ。
今頃になって、小栗の仕種の理由に気づいた。
多分、
「私のこと....好き?」
と尋ねた時の小栗は、
私への気持ちを、う雑多そうに受け止めて、なんとも不機嫌な態度に見えたけれど、
もしかしたら、
あの時感じた小栗の言葉の意味は、
私が想像したものとは、
異なり、とんでもない間違いだったのかも知れない。
「佐藤は多分。前の男のことを引き摺ってて、
未だに新しい恋愛に、足を踏み入れる勇気を、持てないかもしれない。
また、裏切られたり、傷ついたりするのが怖くて、堪らないかもしれない。
だから、
佐藤に無理して先に進めよ、と言ったりしないし、
俺と付き合えとか、そんなこと言うつもりも無い。
ただ、俺がこれをお前に渡した時から、
佐藤をずっと想い続けてるってことは事実で、
これから先も揺るぎ無く、佐藤を愛してる。
この先、何十年経っても、
俺は佐藤が好きで、お前を受け容れたい」
「だからさ、佐藤、いつか俺に伝えて。
俺を好きになったって、
俺と一緒に居たいって、
佐藤の気持ちが俺に向くまで、ずっと待ってる。
待ってるから」
小栗の笑顔は優しくて、
そして、ほんの少し潤んだ瞳が、
大きくカメラに写ったあと、
画面は消えた。
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