kiss19 -笑顔の仮面-前半

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ああ、そうか....。 この顔が、小栗の照れてる表情なんだ。 今頃になって、小栗の仕種の理由に気づいた。 多分、 「私のこと....好き?」 と尋ねた時の小栗は、 私への気持ちを、う雑多そうに受け止めて、なんとも不機嫌な態度に見えたけれど、 もしかしたら、 あの時感じた小栗の言葉の意味は、 私が想像したものとは、 異なり、とんでもない間違いだったのかも知れない。 「佐藤は多分。前の男のことを引き摺ってて、 未だに新しい恋愛に、足を踏み入れる勇気を、持てないかもしれない。 また、裏切られたり、傷ついたりするのが怖くて、堪らないかもしれない。 だから、 佐藤に無理して先に進めよ、と言ったりしないし、 俺と付き合えとか、そんなこと言うつもりも無い。 ただ、俺がこれをお前に渡した時から、 佐藤をずっと想い続けてるってことは事実で、 これから先も揺るぎ無く、佐藤を愛してる。 この先、何十年経っても、 俺は佐藤が好きで、お前を受け容れたい」 「だからさ、佐藤、いつか俺に伝えて。 俺を好きになったって、 俺と一緒に居たいって、 佐藤の気持ちが俺に向くまで、ずっと待ってる。 待ってるから」 小栗の笑顔は優しくて、 そして、ほんの少し潤んだ瞳が、 大きくカメラに写ったあと、 画面は消えた。
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