kiss19 -笑顔の仮面-前半

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-東野との出逢い- --------- 東野とは、社会人1年目の時に付き合った。 彼女は其の当時、王寺商事の受付係だった。 王寺商事は取引先相手で、数回訪問した間の彼女との面識は、挨拶程度だったのだが、 彼女は俺が好きだと言って告白してきた。 それは、やっぱオトコなんで、 可愛い女の子に告白されて嫌なわけは無くて、 軽い気持ちで、俺達は、付き合い始めた。 だが、其の頃は、仕事に追い立てられる毎日で、デートをしたのは数回程度、 それも食事をするだけの女友達と、さほど変わらない関係だった。 キスも其の先も思えば、進んでない。 肉体の性的欲求と、 相手を知りたいと思う感情は、常に対を成していて、 俺は彼女に対して、女としての興味が無かったようだ。 もし、好きだという感情があったのなら、 いくら忙しくても時間を割いて会いに行ったし、 帰り際にキスを仕掛けるぐらいのことはしただろう。 冷めた気持ちに気づいてしまった俺は、彼女に別れを切り出した。 「仕事に専念したいから、別れて欲しい」 実際、目まぐるしい程の滂沱の渦中に、 俺は居て、彼女に割く時間さえも惜しかった。 俺の言葉に偽りは無い。 「別れたくない」と、訴える彼女に、 「ごめん」と、告げ、 別れ話を切り出したカフェを後にして、俺達は終わった。 それから暫く仕事に没頭する日々を送り、 王寺商事の担当は、俺では無くなったため、東野と顔を合わせることもなかった。
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